2012年5月16日水曜日

慢性疲労症候群 - Wikipedia


慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)は、原因不明の強度の疲労が長期間(一般的に6ヶ月以上)に及び継続する病気である。英語 chronic fatigue syndromemyalgic encephalomyelitis(筋痛性脳脊髄炎)、 post-viral fatigue syndrome(ウイルス感染後疲労症候群)の頭文字から CFS、ME、PVFS と呼ばれる。また重篤度が伝わらない・慢性疲労と区別がつきにくいということから、chronic fatigue and immune dysfunction syndrome(慢性疲労免疫不全症候群)という呼称を患者団体が提案してもいる。以下 CFS と略す。

患者が訴える主な症状は、身体及び思考力両方の激しい疲労と、それに伴い、日常生活が著しく阻害されることである。

長期間の疲労感の他に次の症状等を呈することがある。

  • 微熱 ・咽頭痛 ・頸部あるいはリンパ節の腫張・原因不明の筋力低下
  • 羞明 ・思考力の低下・関節障害 ・睡眠障害

原因不明の疾患で、通常、血液検査等も含む全身の検査を受けても他の病気が見つからず、精神疾患も当たらない場合に初めて疑われる(除外診断)病気である。ただし気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、不安障害、身体表現性障害、線維筋痛症は併存疾患として扱い除外しない。 詳細に検査をすると神経系、免疫系、内分泌系などに異常が認められる場合もある。

アメリカ疾病予防センター (CDC) によると、完治は希で5%~10%であるものの、治療により改善したり、ある程度回復するとされている。日本では人口の0.3%にあたる約38万人がCFSを罹患していると推定されているが、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病・神経症・更年期障害・自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる。

疲労とは、身体的または精神的疲労に分別され、痛みや発熱と並んで生体の3大アラームと言われており、身体に休息をとるよう脳に警告するシグナルである。CFS患者では、このシグナルが過剰に働くことにより身体が激しく疲労する症状が続くとされる。すなわちCFSは「身体的な疾患」である。よって、よく間違われることであるが、疲労が蓄積された慢性疲労とは別のものである。体内の不快苦痛・不自由さは生活の障害となっている場合も多く、故に疾病としてのケア・休養・治療、が必要である。

更に、慢性疲労症候群という名称も誤解されやすいものとして、改名を求める声があるが、現時点で改名のコンセンサスは得られていない。

20代から50代のうちに発症するケースが多く、患者全体のうち女性が6~7割程度を占め、アレルギー疾患を併発するCFS患者が多いと言われている。

  • 疲労感 — 身体、精神両方に激しい疲労感が生じる。運動、精神活動によって疲労感が増すが、休息や睡眠による回復は遅い。疲労の程度には個人差があり、何とか働ける程度から寝返りも打てない者もいる。患者の約4分の1は、外出が困難か寝たきりの状態である。CDCの調査[1]によると身体的活動レベルは、多発性硬化症(MS)、後天性免疫不全症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、最終段階の腎不全、慢性閉塞性肺疾患等の病気と匹敵すると報告されている。
  • 痛み — 筋肉痛や関節痛(発赤や腫れがなく、移動性)、頭痛、リンパ節の痛み、喉の腫れ、腹痛、顎関節症、顔面筋疼痛症候群
  • 知的活動障害 — 健忘、混乱、思考力の低下、記憶力の低下
  • 過敏性 — 羞明、音への過敏、化学物質や食べ物への過敏。アレルギー症状の悪化。
  • 体温調節失調 — 悪寒や逆に暑く感じることがある、微熱
  • 睡眠障害 — 睡眠により疲れがとれない、不眠、過眠、はっきりした夢を見やすい。
  • 精神障害 — 感情が変わりやすい、不安、抑鬱、興奮、錯乱、むずむず脚症候群
  • 中枢神経障害 — アルコール不耐性、筋肉の痙攣、筋力低下、振戦、耳鳴り、視力の変化
  • 全身症状 — 口内炎、朝のこわばり、頻尿、体重の変化、動悸、甲状腺の炎症、寝汗、息切れ、低血糖の発作、不整脈、過敏性腸症候群、月経前症候群、発疹

[編集] 診断基準

[編集] 日本疲労学会診断指針 2007

6か月以上持続する原因不明の全身倦怠感を訴える患者が、下記の前提I, II, IIIを満たした時、臨床的にCFSが疑われる。確定診断を得るためには、さらに感染・免疫系検査、神経・内分泌・代謝系検査を行うことが望ましいが、現在のところCFSに特異的検査異常はなく、臨床的CFSをもって「慢性疲労症候群」と診断する。

〔前提I〕
病歴、身体診察、臨床検査を精確に行い、慢性疲労をきたす疾患を除外する。ただし、抗アレルギー薬などの長期服用者とBMIが40を超える肥満者に対しては、当該病態が改善し、慢性疲労との因果関係が明確になるまで、CFSの診断を保留し、経過観察する。また、気分障害(双極性障害、※精神病性うつ病を除く)、不安障害、身体表現性障害、線維筋痛症は併存疾患として扱う(※妄想や幻覚を伴ううつ病の場合に、精神病性うつ病と呼ばれる)。
〔前提II〕
〔前提I〕の検索によっても慢性疲労の原因が不明で、以下の4項目を満たす。
  1. この全身倦怠感は新しく発症したものであり、急激に始まった
  2. 十分休養をとっても回復しない
  3. 現在行っている仕事や生活習慣のせいではない
  4. 日常の生活活動が発症前に比べて50%以下になっている。あるいは疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事ができず休んでいる
〔前提III〕
以下の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上を認める。
  1. 労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)
  2. 筋肉痛
  3. 多発性関節痛(腫脹はない)
  4. 頭痛
  5. 咽頭痛
  6. 睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)
  7. 思考力・集中力低下
  8. 微熱
  9. 頚部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合)
  10. 筋力低下((8)(9)(10)の他覚的所見は、医師が少なくとも1か月以上の間隔をおいて 2回認めること)。

今回、CFSに加え、特発性慢性疲労(英: idiopathic chronic fatigue、ICF)という診断名が追加された。上記前提I, II, IIIに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合、ICFと診断し、経過観察する。従来の「CFS疑診例」に相当するものだが、ICFは国際的に通用する用語であり、ICFという病態は患者に説明しやすく、診療報酬の観点からも有用と考えられている。

[編集] 厚生省診断基準案

  1. 大クライテリア(大基準)
    1. 生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヵ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
    2. 病歴、身体所見、検査所見で別表に挙けられている疾患を除外する。
  2. 小クライテリア(小基準)
    1. 症状クライテリア(症状基準)-(以下の症状が6ヵ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)
      1. 徴熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒
      2. 咽頭痛
      3. 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張
      4. 原因不明の筋力低下
      5. 筋肉痛ないし不快感
      6. 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
      7. 頭痛
      8. 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
      9. 精神神経症状(いずれか1つ以上): 光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ
      10. 睡眠障害(過眠、不眠)
      11. 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に出現
    2. 身体所見クライテリア(身体所見基準) - (少なくとも1ヵ月以上の間隔をおいて2回以上医師が確認)
      1. 微熱
      2. 非浸出性咽頭炎
      3. リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)または圧痛
  • CFSと診断する場合 - 大基準2項目に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たす
  • CFS疑いとする場合 - 大基準2項目に該当するが、小基準で診断基準を満たさない
  • 感染後CFS - 上記基準で診断されたCFS(「疑い」は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例

但し、以上の基準は初期研究段階において、研究対象にする患者を厳格にふるい分けるために作られたものであり、小クライテリアが多く、また、精神疾患を持っていればCFSから除外という問題のある診断基準であるので、実際の診断にはもっと基準を緩めてもいいのではないかという意見が、一線の研究者からも出ている。

また、CFS患者特定の検査は、近年諸処現れているものの血液などの化学検査でそれ一つで確定できるようなものはない。現在では、症状を示す他の疾患である可能性を除外する除外診断が一般的である。このため、客観的にCFSを鑑別できるバイオマーカーの必要性が叫ばれていたが、大阪大学・大阪市立大学共同チームにより、血液 1,2mlに近赤外線をあて、約95%の確率で鑑別できる近赤外線分光法が最近開発された(しかし、CFS患者特有のスペクトルを起こす血液中の物質はまだ特定できておらず、研究プロジェクトを立ち上げる予定)。


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[編集] アメリカCDC診断基準(fukuda) 1994

  1. 医学的に説明がつかない、持続的にあるいは繰り返し起こる疲労感で、6カ月以上持続し、新たにまたは明確に発症したもの。運動が原因ではなく、休養によって軽減されず、仕事や勉強、社会的行動や個人的行動を事実上妨げる疲労感。
  2. 下記の症状のうち4つ以上があてはまる場合(疲労感が起こる前ではなく、疲労感に伴って、持続的にあるいは繰り返し認められること)。
    1. 最近の出来事をよく覚えていない。あるいは仕事や勉強、社会的行動や個人的行動に支障が出るほどひどい集中力の低下がみられる
    2. のどの痛み
    3. 首またはわきの下のリンパ節に圧痛がある
    4. 筋肉痛
    5. 2カ所以上の関節に痛みがあるが、腫れや圧痛は認められない
    6. 過去の頭痛とは種類、パターン、程度などが異なる頭痛
    7. 眠っても疲れがとれない
    8. 運動後24時間以上、体調不良が持続する

疲労・侮怠の程度は、PS(パフォーマンス・ステイタス)により判断される。CFS患者は、PS値が3-9の間である。

  • 0 - 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
  • 1 - 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある。
  • 2 - 通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
  • 3 - 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
  • 4 - 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
  • 5 - 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
  • 6 - 調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
  • 7 - 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である。
  • 8 - 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
  • 9 - 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

[編集] 原因諸説

CFSの機序・病原については、国内外とも、生理学・疫学的な研究を含む多くの研究がされているがはっきりしない。

アメリカの医療従事者向けの治療ガイドには、3,000以上の研究報告が存在し、CFSは生理学的な病気である十分な科学的証拠がある[2]と記されている。また、2008年発刊のトキシコロジージャーナルには、CFSは、主として神経・内分泌・免疫系統の機能不全の一群であるとし、外因性の化合物・感染症・ストレス・幼少期の虐待等がCFSを起こす要因である可能性があると述べている[3]。しかし依然、明確に説明できるような原因は見つかっていない[4]

過去、発症要因と考えられたものには以下のようなものがある(患者により異なる)

  • 風邪、 発熱 (インフルエンザ等)
  • ストレス、 トラウマ
  • 感染症(細菌、真菌、ウイルス)
  • 外傷
  • その他 (化学物質、 紫外線、 アレルギー、外科手術、 出産 、遺伝、環境 など)

かつては原因不明の未知の病気とされたが、決定的な病因は特定されていないものの、そのメカニズムは徐々に解明されつつある。大阪市立大学の研究によると、中でも種々の生活環境ストレスが第一の病気を発症させる引き金になっているとされる。

CDCによる近年の研究では、身体がストレスに対応するのを助ける12の遺伝子群に特別な変化のセットを持つ人々に生じている疾患であり、「トラウマ、感染、負傷などによる身体的・精神的なストレス」によって活性化される「視床下部 - 下垂体 - 副腎 (HPA)系の混乱」が引き金となって発症する病気と考えられている。

重要なのはストレスとは、楽しくない事柄だけをさすのではなく、「ストレッサー」と呼ばれる外的刺激が原因であり、物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線など)、化学的ストレッサー(酸素、薬物など)、生物的ストレッサー(炎症、感染)、心理的ストレッサー(怒り、不安など)に分けられる。ストレス反応とは、ストレッサーに対する防衛機構が働き、身体の恒常性(ホメオスタシス)を変化させるもののことを意味している(よって、本人がストレスと気づかない場合もストレスとなっている場合がある)。これらのストレスに対する作用を主に司っているのが間脳視床下部であり、その指令の伝達網の役割を自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っている。

なお、CFSはストレスとの関連があるが、「心理的な病気」ではなく肉体が激しく疲労する「身体的な病気」である(ただ、患者の中にはCFSにる副次的な精神疾患を併発する場合がある)。医学的研究によりストレスは免疫が介在する疾患で重要な役割を持っており、実際に精神神経免疫学という新しい研究分野として研究が行われている。 種々の外的ストレスが、「自律神経」や「内分泌系」を介して「免疫系の調節」をしていることも明らかになっており、自己免疫の発症の誘因になることも明らかになっている。

患者の疲労の主因として以下のような「身体的な異常」が重なっていると考えられている。

[編集] 遺伝子の異常に関する研究

マーカー遺伝子の発現解析結果を検査することで、高精度でCFSの診断が出来ると期待される。 このことにより、診断が困難であったCFSの確定診断としての利用が望まれる。また、有効な治療法が無かった病気だが、新薬の開発への糸口になる可能性がある。 日本では、六反一仁・徳島大学ヒューマンストレス研究センター長らが開発した、血液中の1400以上の遺伝子を調べられるDNAチップなどの遺伝子に関するいくつかの研究を発表しており期待されている。 また、大阪市立大学では、患者に遺伝子発現の検査を行っており、抗ウイルス・NK活性・T細胞・エネルギー産生・細胞死・ミトコンドリア産生の遺伝子の活動レベルを検査している。

[編集] 免疫の異常に関する研究

人が疲労を感じる際、そのシグナルとなる疲労伝達物質であるサイトカインが産生されるとされる。CFS患者では、このサイトカイン(TGF-β 及び インターフェロン)の産生異常といった免疫機能障害によって、異常な疲労感が引き起こされると考えられている。

サイトカインの産生異常の原因として、様々な研究がされている。 患者の中には免疫の指標であるNK活性が低下している者がおり、免疫低下により体内のウイルスが再活性化してサイトカインが産生されている。 なお、科学誌サイエンスに、XMRVウイルスと慢性疲労症候群の関連が報告されているが、実際にロンドンのKing's College HospitaやオランダのRadboud 大学で検証したところ患者の誰からもウイルスは見つからなかった。 また、CDCで行われた大規模な検証やその他の多くの研究から、CFSを確実に発症させるような特定のウイルスは存在しないことが明らかになっている。よって、CFSは他人に感染したりするようなものではない。

近年のサイトカイン産生異常の研究では、CFSはストレスと密接な関係があるとされ、脳内サイトカインが様々な「ストレッサー」によるストレス刺激によって産生されることがわかってきている。ストレッサーには、物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線など)、化学的ストレッサー(酸素、薬物など)、生物的ストレッサー(炎症、感染)、心理的ストレッサー(怒り、不安など)がある。ストレッサーが存在すると生体は各種ストレスホルモン分泌を増加させ、ストレッサーに対する防衛機構を働かせる。これをストレス反応と呼ぶ。種々の外的ストレスが、「自律神経」や「内分泌系」を介して「免疫系の調節」をしていることも明らかになっており、精神的ストレスが内分泌系や交感神経を介して、末梢の免疫細胞の機能変� ��を誘導し、自己免疫の発症の誘因になることも明らかになっている。

九州大学の研究によると、脳内サイトカインの産生は、中枢神経系における感染などの炎症によって誘発されるだけでなく、拘束ストレスや環境ストレスなど、非炎症性ストレスによっても誘導される。疲労もまた、様々なストレスによって誘発され、さらに重症化、あるいは慢性化される。疲労の種類は、

  1. 強制歩行などによる肉体的疲労
  2. 拘束や不安による精神的疲労
  3. 暑熱暴露などによる環境疲労
  4. 感染や腫瘍、および自己免疫疾患などによる免疫学的疲労

に分けることができる。これらの分類は、とりもなおさずストレスの分類法でもあり、従ってストレスと疲労とは、表裏一体をなすものであり、脳内のサイトカインはこれらを結ぶ、キーワードになると考えられる。


胸郭の右下の痛み

[編集] 内分泌の異常に関する研究

CFS患者の発症前の状態として広く報告されている、トラウマ・感染・負傷などによる「物理的もしくは精神的なストレス」は、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を活性化し、コルチゾール等の「ホルモン」の放出を促進させ、「免疫系」等の多くの体のシステムに影響するとされる。

コルチゾールとは、ストレスを受けた時に身体の防衛反応が働き、脳視床下部からの指示で副腎から分泌されるホルモンである。 その他の研究においても、CFS患者や、線維筋痛症等のCFSと関連する疾患に、類似のホルモン異常がみられており、コルチゾールは、炎症や細胞性免疫の活性化を抑制する作用を持っているとされ、コルチゾールレベルの低下は、炎症プロセスや免疫細胞の活性化につながると考えらている。また、運動後のコルチゾールに関連した炎症反応を起こす遺伝子発現の異常もみられ、診断法に用いられる可能性がある。

なお、CFS患者はコルチゾールレベルが低下していることが明らかとなっているが、免疫学データによると、CFSにみられるコルチゾールレベルの変化は、正常と認められる範囲内であり、患者群と健常者群の平均値を比較することで、初めてその違いを見ることがでる。すなわち、コルチゾールレベルをCFS患者の診断方法として用いることはできない。

また、TGF-βの産生異常により、神経ホルモンDHEA-Sの低下・アシルカルニチン異常・グルタミン酸・γ-アミノ酪酸 (GABA) の産生低下が起こっていると考えられている。 患者の約半数の血液中に、自己免疫疾患の患者の血液中だけにみられるCHRM1(ムスカリン1型アセチルコリン受容体)抗体という特殊たんぱくが見つかっており、その他 OPRM1(オピオイドμ受容体)、 HTR1A(セロトニン1A受容体)、DRD2(ドーパミンD2受容体)も血液中に存在する患者が存在する。 アセチルコリン受容体に対する自己抗体は、重症筋無力症と関連があり、CHRM1が血中に存在する患者は脱力感・思考力低下の症状が強い。

[編集] 神経学的な異常に関する研究

CFS患者で、脳内の神経細胞の活動性が下がっている部位が幾つかある患者が居る。前頭前野(ブロードマン24,32,33と9/46d野)の部位に限定してのアセチルカルニチン取り込みが低下しており、この前帯状回の神経細胞は、自律神経系の中枢部であり、グルタミン酸などの合成が上手く行われていない可能性があり、このことにより自律神経系の諸症状がでることにつながっていると考えられている。また、血中アセチルカルニチンの濃度低下により、倦怠感・思考力・集中力の低下なども引き起こす原因とされている。

また、ポジトロン断層法 (PET) による脳の血流を調べたところ、前帯状回・眼窩前頭野(意欲やうつ状態と関係している)・背外側前頭前野(新しい計画を立てたり新たな行動の意欲と関係)・側頭葉(記憶に関連している)・後頭葉(視覚と関連)・脳幹部(意識を調節する部分や筋肉との共同運動を調節し、呼吸・心拍・体温調節などの基本的な生命現象の中枢)などの血流が大幅に低下し、神経細胞の活動レベルが下がっている患者が見つかっている。一部の患者の不定愁訴はこれらによるものと推測できる。

[編集] 感染症に関する研究

CFSにおいて、感染症を原因とした毒素が関連しているのではないかという研究がされている。日本では、ほとんど行われていない。

一般培養での検出が不可能な、偏性細胞内寄生体(リケッチア等)や、 感染後、血液所見にほとんど変化をもたらさない百日咳(Bordetella pertussis)等の、多数の毒素(Bordetella pertussisでは7種の毒素が判明している)を生産する細菌群が上げられる。

[編集] 病名呼称各種

筋痛性脳脊髄炎(ME)
1938年から医療文献に記されている。1988年に、イギリス衛生省・英国医療協会により、公的にMEを真に存在する・重症の病気であるとした。脳脊髄炎と名前に含まれているが、炎症がないから不適切だと主張するものもいるが、患者に炎症が見つかっているケースがある。イギリス・カナダ等では、CFSよりMEという呼称が利用されている。
慢性疲労症候群(CFS)
1988年に、CDCにより名付けられた病名。アメリカ・日本等ではこの呼称は利用されている。しかし重傷度が伝わらない[5]等の理由により、多くの患者・医師等は改名を望んでいる。
ヤッピー・フルー
「裕福層のインフルエンザ」を意味する蔑称である。1990年のニューズ・ウィークの記事で取り上げられた。裕福層にCFS患者が多く、仮病・バーンアウト症候群だと思われていたからである。現在では、裕福層だけに発症するわけではなく、あらゆる階級・人種に発症することが分かっている。この呼称は、世にCFSを精神疾患・怠惰なだけだという偏見を生み出してしまった。
慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)
アメリカの患者団体が、慢性疲労と間違われやすい・重症度が伝わらないということで提案している病名。
慢性活動性EBウイルス感染症(CEBV)

[編集] 他の疾患とCFSの鑑別・関連

アメリカン・ファミリー・フィジシャン in 2002によると、いくつかの病気とかなりのオーバーラップがみられる。多発性硬化症(MS),甲状腺病,貧血,糖尿病などとは、その病気にふさわしい症状があれば、CFSから除外されるとある[6]

  1. うつ病 : CFSとうつ病とのオーバーラップが指摘されており、CFSという疾患概念そのものの存在に疑義を投げかける見解もあるが、CFS患者の体内では、コルチゾール・バソプレッシン等のホルモン量が少ないこと・運動・精神活動後に著しく疲労を感じる・buspirone負荷試験でセロトニン受容体の上方調節が認められない・MHPGが減少している・発症年齢が20代~40代という若い年代に多い・患者の2/3が女性・睡眠時の脳波異常・喉とリンパ節の腫れがある・罪業妄想がない・感染症で集団発生する・突如発症することが多いなど、うつ病とは異なる病態であることを示している。しかし、反応性のうつ病との合併例は多い。
  2. 線維筋痛症(FMS): CFSの症状と同様の症状 筋肉痛・疲労・睡眠障害等がある。CFSとの合併例が非常に多い。CFS・FMS両方同様の病気として扱う医師もいる。
  3. 化学物質過敏症(MCS): 患者は、化学物質に過敏に反応し、睡眠障害がある。
  4. 湾岸戦争症候群(GWS): 症状はCFS患者の症状と酷似している。劣化ウラン弾・化学兵器・マイコプラズマ・神経症などが原因ではないかといわれている。患者の約半数に、マイコプラズマの抗体が見つかっている。
  5. 伝染性単核症:伝染性単核症発症からの6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月間中、約13%、7%、4%の患者がCFSを発症するが、ほとんどの患者は時間と共に回復する。(調査対象301名、12~18歳)[7]
  6. ライム病
  7. 過敏性腸症候群(IBS)
  8. 多発性硬化症(MS)
  9. 膠原病
  10. 甲状腺機能低下症
  11. 後天性免疫不全症候群(AIDS)
  12. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  13. 身体表現性障害
  14. 不安障害
  15. セリアック病
  16. 神経衰弱

心身共に休養させる必要がある。薬剤に関しては、漢方薬(補中益気湯・十全大補湯・六君子湯等)・ビタミンC・メチコバール・抗うつ薬・免疫グロブリン。眠剤等の処方・認知行動療法・段階的行動療法・ペイシングなどで多少の効果が見られる場合があるが、特効薬は見つかっておらず、長期に渡って苦しみ続けている患者は今なお多い。

多くの治療法があるが、ほとんどの治療法に限界はある。重要なのは、PS値や患者の体質によってその効果は異なることで、場合によっては良い効果がみられることがある。治療法の中には、未確認であり、悪影響が考えられるケースもあるので慎重に選択する必要がある。


非有害な代謝障害

[編集] 非薬理療法

認知行動療法
CFSについて知ることは、治療における重要な要素である。これは、病気を悪化させると思われる活動や行為を、どのように調整したらいいのか学ぶことである。こういった知識を学ぶ正式な方法は、認知行動療法と呼ばれており、患者は疾患への対処がより容易になり、新たな症状を誘発することなく、活動量を増すことができるようになることが知られている。また、家族も教育を受けることで、良好なコミュニケーションを保つことができるようになり、CFSが家族に与える種々の悪影響を軽減できるとされる。
ストレスの回避
一般的に最も有益な方法は、患者が肉体的/精神的ストレスを避けて心身共に休養させることである。実際にストレスにより、短期/長期にわたる深刻な病状の悪化が多くみられ、多くの患者が初期段階でもっとストレスを避けることができていたら、これほど症状が重くならなかったのではないかと考えている。原因諸説に記載されているように、CFSは「トラウマ、感染、負傷などによる身体的・精神的なストレス」によって起こる、免疫系、内分泌系の異常や脳・神経系の機能障害といった身体的な異常によって極度に疲労するとされている。
適度な運動は、肉体的、精神的健康を保つとされる。それは、CFS患者も例外ではないが、運動の量と運動をやめる時期に注意を払うことが重要である。最も重要な点は、どのような程度の運動をおこなうにしても、疲労レベルを増加させないよう患者個人にあったレベルの範囲内に抑えることである。ヨガ・太極拳等も効果のある場合がある。しかしながら、無理をすると、疲労や痛みが増し、逆効果となる場合がある。また、PS値の高い重症患者は軽度の運動も出来ないため、運動療法が行えないケースもある。
温熱療法
新陳代謝を促し、筋肉の緊張をほぐしたり、血流を良くして免疫を高める効果がある。温灸・入浴など。入浴は体力にあった範囲内にすること。PS値が高く入浴できない患者には、短時間で入る半身浴、足湯などがある。

[編集] 薬理療法

薬物療法は、個々の患者に特有の症状群を軽減するためのものである。CFS患者は、多くの薬剤に対して過敏であることが多く、中でも中枢神経系に作用する薬剤で顕著である。したがって、一般的な治療指針としては、極低用量から始め、必要性や耐量にあわせて、徐々にその量を増すのが良いとされる。また、患者によって効果は異なることや、副作用がある薬もあるので患者の体質や症状から慎重に選択することが望まれる。

漢方薬
補中益気湯は補剤と呼ばれており、病後や術後の免疫低下や、微熱・全身倦怠感などにCFSの症状に似ている症状の場合処方されており、患者の4割に有効とされている。なお、CFS患者において証は一定の傾向を示さないため、「証」の分類、及びその見立てに従った本格的な漢方治療の研究が名古屋大学にて行われている。
非ステロイド系抗炎症剤
これらの薬は、CFS患者に痛みがある場合にその症状を軽減するために用いられている。
低用量三環系抗うつ剤
三環系の薬は、睡眠の改善や軽い全身疼痛の軽減を目的として処方される。
他の抗うつ剤
非抑うつCFS患者に、SSRI(セロトニン再摂取阻害剤)を投与したところ、治療効果がみられたとの報告がいくつかなされている。CFS患者の中には、うつ症状のある患者も一部みられ、この治療に対しては、より新しい抗うつ剤の処方が行われている。Fluoxetine(Prozac)、Sertraline(Zoloft)、Paroxetine(Paxil)、 Venlafaxine(Effexor)、Trazodone(Desyrel)、Bupropion(Wellbutrin)などがある。効果には個人差があり、また程度の差はあるものの、興奮、睡眠障害、疲労増加など、副作用がある。
抗不安剤
CFS患者の不安症状に対しては、抗不安剤が処方される。
抗菌剤、抗ウイルス剤
近年、この治療は行われなくなってきている。抗ウイルス剤アシクロビルを使った対照試験では、CFS患者には効果がみられていない。まれに患者の中には感染症の症状を併発しているケースがあり、この場合を除いてCFSの治療として処方されるべきではないとされている。
抗アレルギー治療
CFS患者の中には、アレルギーの病歴を持っている方がおり、周期的に、それらの症状が表れる場合がある。非鎮静抗ヒスタミン剤は、こういったアレルギーを持つCFS患者に有効とされる。
アンプリジェン
アンプリジェン投与群は、プラセボ群に比べて認識力/行動力に中度の改善がみられたと報告されている。しかし、これらの予備研究の結果は、さらなる確認が必要とされる。なお、現段階では認可されていない薬である。
その他(ビタミン、補酵素、ミネラル、健康食品、芳香療法、鍼灸など)
ビタミンC
(アスコルビン酸)を大量(1,000mg 毎食後)を服用することにより、活性酸素を除去し、組織障害を減少させることができ、微熱が軽減する例がある。ビタミンCは酸性であり、大量に服用すると胃を痛めることがあるので、セルベックス等の胃薬を併用する。
メチコバール
(毎食後 1,000μg)は、ビタミンB12であり、元来、末梢神経炎の治療薬として用いられていたが、睡眠障害にも有効であると報告があり、脱力感・疲労感を軽減し、思考力を回復する例がある。
代替医療
コエンザイム、カルニチン、NADH、必須脂肪酸、リンゴ酸、マグネシウム等のサプリメントで症状が緩和することもあり、自律神経系の乱れには、緑の香りのアロマテラピーが効き、脳の疲労が軽減する。鍼灸療法では鎮痛効果や筋肉の緊張を緩め血行を促進させる効果がある。また、加工食品の扱いになるが、反鼻(マムシの肉)・蝮胆(マムシの胆嚢)には、セロトニン前駆物質トリプトファン・各種ビタミン・ニコチン酸などが含まれているためそれらの相乗効果により単体でそれぞれを摂取するよりも症状を緩和させる場合がある(マムシ丸ごと一匹のものとは性能が異なるため注意)。
抗疲労物質
アミノ酸、クエン酸など。鶏むね肉には抗疲労効果が期待されているカルノシンとアンセリンが豊富とされる。

[編集] 医療機関の対応

現在、CFSの診察を積極的に行っている医師はごく少数である。また、医師の間でCFSの認識は薄く、専門医でなければこの病気の可能性を見いだせなかったり、的確に診断できない場合がある。精神疾患等に誤診される場合があり、患者は多くの病院を訪れ(ドクターショッピング)、長年の後CFSの診断を受けることが多い。それでもここ数年は、政府の疲労プロジェクト・日本国外の研究報告によってCFSの研究が進んだこと、各メディアが取り上げるようになったことなどによって、認識が広まってきている。また、アメリカ政府が公的にCFSを認めたこともあり、今後の認知は深まると考えられる。

研究者としては倉恒弘彦(現在 関西福祉科学大学教授・大阪市立大学 客員教授)など。

[編集] 発症

突然にインフルエンザのような症状を呈し発症するか、疲労やストレス等の蓄積で発症し徐々に悪化するケースも多くある。

[編集] 突然の発症

突然にCFSを発症し、ある日・ある時間に発症するということを覚えている患者もいる。

しばしば、他の病気と一緒に、または、他の病気によって引き起こされる。インフルエンザや気管支炎などへの感染、アレルゲン(ペンキ・新しいペット・建設物の埃)への曝露後、CFSの症状が現れるようになる。組み替え型のB型肝炎ワクチンがCFSの発症原因の一つではないかという説もある。

[編集] 徐々な発症

いくつかのケースでは、ゆっくりとしたペースで(何年にも渡るケースがある)進行する。こうした患者は、発症時にはCFSに気が付きにくい。ストレスや過労からだと思い、しばらくすれば治ると思ってしまうが、長く症状が続くので治療を求めるようになるようである。

[編集] 予後

一般的に、予後は良くない。発症が突然である場合、数年である程度症状が改善することもある。完治は希であり、数十年もの期間症状が続くケースも多く、寝たきりの状態が続いている患者も多い。早期治療を受けたケースでは予後が良いが、治療を受けずに自然治癒することはあまりない[8]。激しい運動・ストレス・他の病気などにより症状は悪化しやすい。免疫が落ちていることが多いため感染症に罹患しやすく、エイズ患者にしかならないような病気も合併する例があり注意が必要である。また、CFS患者は、平均寿命が短いという報告がなされている。癌・心不全・自殺などが主な理由だとされる。2006年6月13日、32才イギリス人女性が死亡し、厳格な検死鑑定が行われ、CFSにより尿を産生することができず脱水症状を起こし死亡したとされ、初の公的なCFSによる死とされた[9]。彼女の脊髄には炎症が発見された。


CFSは比較的新しい疾病概念であるが、古代医学の巨人ガレン(西暦130~201年)の著書の中にもCFSの病態のように思われる記述が残っている。18世紀にも裕福層に多く同様の病態の患者がいた記録が残っており、著名人の中でも、フローレンス・ナイチンゲール、チャールズ・ダーウィン等も同様の病状のようであったようだという記録が残っている。

1930年代から1950年代にかけて、世界各国60ヶ所以上で発症例が報告された。主な国はアメリカ・イギリス・オーストラリア・アイスランド・ドイツである。当時はCFSという概念がなく、発症した病院名や地域の名をとり、ロイヤルフリー病・アイスランド病などと呼ばれ、異形ポリオ・集団ヒステリーなどではないかと推察されていた。

1930年代後半に、筋痛性脳脊髄炎(Myalgic Encephalomyelitis)という名で免疫・神経学的な研究がなされ、WHOによりCFSは、中枢神経系の病気であると、1969年に分類されている。そして、1992、1993年には、"ME(筋痛性脳脊髄炎)"と"CFS(慢性疲労症候群)" 両疾病概念は、WHOの国際疾病分類 ICD-10 G93.3 PVFS(感染症後疲労症候群)にまとめられた。

1984年には、アメリカ・ネバダ州にある人口約2万人のインクラインで、人口の約1%にあたる約200名が強い疲労などを訴えた(ネバダ・ミステリー)。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が調査に乗り出し、病名を慢性疲労症候群 (Chronic Fatigue Syndrome) とした。1988年には診断基準も作成された。当初、未知のウイルスの関連が考えられていたが、現在は否定されている。 ただ、一部の症例ではウイルスや他の病原体が原因となっている可能性があると報告されている。

現在、CFSの発症には様々な仮説が提案されており、原因解明の研究を行っている段階である。患者には脳(前頭葉、後頭葉領域)の血流低下が多く見られることがわかってきており、脳の機能障害が激しい疲労感と同様にCFSに共通した症状とされ、免疫系、内分泌系、神経系の異常が密接に関係してると考えられている。

日本ではあまり関心を持たれてはいなかったが、1991年に、厚生省のCFS調査研究班が発足。1993年には、日本における診断基準を満たす患者が、474例報告された。以後、阪大を中心に、CFSの研究・診察が行われた。2005年には、大阪市立大学医学部に疲労クリニカルセンターが設立された。一般的な疲労を含み、CFSの研究・診察を行っている。

諸外国でも研究が進められ、生理学的な異常が多く報告されるようになっている。2001年には、イギリスの保健省首席医務官が、すべての医師はCFSを深刻な病気とみなし治療するように指導した[10]。アメリカ・ヨーロッパ諸国・韓国等でも同様の動きがある。だが、医師の間ではCFSが身体的疾患か精神疾患か、またそもそもCFSという疾患が存在するのかといった議論が絶えない。しかし、徐々にではあるが世界の医療従事者の中でも認知が深まりつつある。

2006年には、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が、C3(CFS Computational Challenge)[11][12]と題された、ゲノム学者・分子生物学者・数学者・エンジニア等で行った大々的な研究結果を報告し、CFSが存在すること、精神疾患であることを否定し身体的な病気であると宣言をした[13]。これに合わせアメリカ国内で、Get informed. Get diagnosed. Get help. [14][15]と題された認知キャンペーンを400万ドルをかけて開始し、アメリカ疾病予防管理センター長も、CFSを深刻な病として扱うことを訴えた[16][17]。病名の変更もアメリカで議論され、変更される予定である。2007年度、イギリス政府が再び、医師に真剣に治療するように指導し、新しい治療ガイドライン[18]を発布した。

日本においては、厚生労働省CFS研究班が廃止され未だ政府によりCFSを医療従事者に診察・治療を行う指導は行っていない。

[編集] 社会的問題

1900年代前半には内科的な病気である可能性が高いと思われていた。だが、当時の診断技術では患者特有の異常が見つからず、精神疾患だと医療従事者の中でも思われるようになった。CFS患者は、心の中の問題だけにされてしまう傾向がある。本来なら神経内科医が診る疾病であるが、仮病や心気症的な振る舞い(注意をひいている)・時には詐病とまでされ精神科にまわされることが多く、診察を拒否する医師さえいるので、患者は診断を受けるために長期の時間苦しむことになり、病気を難治化・長期化してしまっている。また、多くの患者は働くこともできず、障害年金も受給されないことが多く、経済的に困窮することになる。周囲の人々から理解を得られにくく、怠けている・精神的[19]に問題があるなどとされる傾向がある。CFS患者の自殺率は非常に高いという報告がある[20]が、こうした周辺環境が関与している可能性がある。CFSは日本全体においても大きな経済負担になっており、CFSによる日本の経済的損失は1.2兆円[21]と推定されている。


  1. ^ CDC Press Conference November 3,2006 - The Chronic Fatigue and Immune Dysfunction Syndrome Association of America and The Centers For Disease Control and Prevention Press Conference at The National Press Club to Launch a Chronic Fatigue Syndrome Awareness Campaign
  2. ^ CDC - CFS Basic Overview (PDF file, 31 KB)
  3. ^ Dietert, RR; Dietert JM (2008 Feb 8). "Possible role for early-life immune insult including developmental immunotoxicity in chronic fatigue syndrome (CFS) or myalgic encephalomyelitis (ME)". Toxicology. PMID 18336982. 
  4. ^ Lombardi VC, Ruscetti FW, Das Gupta J, Pfost MA, Hagen KS, Peterson DL, Ruscetti SK, Bagni RK, Petrow-Sadowski C, Gold B, Dean M, Silverman RH, Mikovits JA (2009). "Detection of an Infectious Retrovirus, XMRV, in Blood Cells of Patients with Chronic Fatigue Syndrome". Science 326 (5952): 585?9. doi:10.1126/science.1179052. PMID 19815723. 
  5. ^ TXT formal Jason LA, Taylor RR. (2001). Measuring Attributions About Chronic Fatigue Syndrome. J Chronic Fatigue Syndr 8 (3/4); 31-40
  6. ^ Fukuda K, Straus S, Hickie I, Sharpe M, Dobbins J, Komaroff A (1994). "The chronic fatigue syndrome: a comprehensive approach to its definition and study. International Chronic Fatigue Syndrome Study Group.". Ann Intern Med 121 (12): 953?9. PMID 7978722.
  7. ^ Chronic Fatigue Syndrome After Infectious Mononucleosis in Adolescents
  8. ^ R. Cairns and M. Hotopf "A systematic review describing the prognosis of chronic fatigue syndrome Vol. 55 No. 1 Society of Occupational Medicine 2005"
  9. ^ Sophia's Story 06
  10. ^ CFS/ME Working Group. A report of the CFS/ME working group: report to the chief medical officer of an independent working group. London: Department of Health, 2002. Fulltext at DOH.
  11. ^ PubMed 16515400 Vernon SD, Whistler T, Aslakson E, Rajeevan M, Reeves WC. Center for Infectious Diseases, Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, GA 30333, USA.Challenges for molecular profiling of chronic fatigue syndrome.
  12. ^ CDC Press Briefing on Chronic Fatigue Syndrome April 20, 2006
  13. ^ CDC Press Conference, November 6, 2006
  14. ^ CDC CFS Awareness Campaign
  15. ^ CFIDS Association - SPARK! The Campaign to Ignite CFS Awareness
  16. ^ CFIDS Association SPARK! The campaign to Ignite CFS Awareness - Events - Press event Nov.3,2006 at the National Press Club in Washinton, D.C.(QuickTimeFile)
  17. ^ CDC Chronic Fatigue Syndrome > Awareness Campaign > PSAs > Dr. Gerberding's Massage
  18. ^ NHS - Chronic fatigue syndrome / Myalgic encephalomyelitis (or encephalopathy); diagnosis and management
  19. ^ CDC>Chronic Fatigue Syndrome > Awareness Campaign > Public Service Announcements (PSAs)
  20. ^ Jason LA, Corradi K, Gress S, Williams S, Torres-Harding S. "Causes of death among patients with chronic fatigue syndrome." Health Care Women Int. 2006 Aug;27(7):615-26.
  21. ^ 倉恒弘彦ほか:慢性疲労症候群に対する治療法の確立.科学技術振興調整費 生活ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防衛に関する総合研究」平成16年度研究業績報告書,2005.

[編集] CFS関連図書

[編集] 外部リンク

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